アダン葉帽子とは

アダン葉帽子の歴史

HISTORY

黒糖や泡盛と並ぶ三大輸出品に


戦前

鹿児島出身の寄留商人片山徳次郎によって、アダンの葉の漂白方法や編み方が確立されたことでアダン葉帽子産業が沖縄で大いに盛んになりました。

1910年代の最盛期には、黒糖、泡盛、アダン葉帽子と言われ、3大輸出品に挙げられるまでになったそうです。当時、県内には帽子製造会社が10社以上あり、帽子クマーと呼ばれる編み手は3万人いたとも言われています。

衰退の一途をたどる


戦後

たくさんの人が従事していたアダン葉帽子産業ですが、業者間の競争が激しくなり、とうとう帽子の材料であるアダンが取れなくなって紙を撚った材料で編むゲンロー帽子に取って代わりました。

その後は戦禍にあったり、時代の移り変わりとともに廃れていき、今ではすっかり忘れられた工芸品となってしまいました。

世界に誇る、大切な財産に


現在

私は沖縄の自然や歴史、文化が息づいているアダン葉帽子は「世界にも引けをとらない大切な財産」として後世に伝えていきたいと心から思っています。

アダンが生み出す美しい帽子を知ることで、豊かな自然の恵みとその中で生活する平和な世界を感じていただけたらと願っています。

アダン葉帽子の美しさ

BEAUTY

帽子の中に宇宙が見える

UNIVERSE

帽子の中に広がる景色は、まるで宇宙そのものです。

ひとつひとつの工程が、手作業で丁寧に進んで行きます。葉を引く力、手触りとその匂い、五感をフルに使って編んで行きます。

帽子の始まりの渦はまるで宇宙のようです。この美しい渦の流れと独特のテクスチャーは言葉では表現しきれません。帽子を作る全ての作業は、この美しさに出会うための旅のようなものだと思います。

手間をかける贅沢

LUXURY

帽子を編む前に「アダン葉の処理」があります。

「棘の取り除き」「茹でる」「浸す」「干す」の工程で約1カ月以上かかります。この時間もとても大切です。効率化を考えていたら到達できない美がそこにあります。アダン葉帽子は材料作りから編み上げるまでたくさんの時間を費やして出来上がるとても贅沢な帽子なのです。

アダン葉帽子ができるまで

HOW TO MAKE

STEP

アダン葉を採取する

青々とした1mほどのアダン葉を一枚ずつ鎌で刈り取ります。
短いものは長くなるまで待ちます。

STEP

トゲを取り除く

葉の裏と葉の両端にある3本のトゲの列を取り除きます。

STEP

茹でる

鍋に入れて火にかけると色が鮮やかな緑から深緑に変化します。

ほんのり甘い香りがしてきてから約1時間煮沸します。その後、火から下ろして流水で洗います。

STEP

浸す

シークワーサーのお風呂に一晩浸します。

柑橘の爽やか香りが立ち込めます。

STEP

干す

翌日から天日干しで乾燥させます。アダン葉はたくさん紫外線を浴びるほど白くなる性質があります。

2,3日するとストローのように捲れてくるので、それを防ぐためにくるくると巻いておきます。

STEP

編み上げる

アダン葉帽子は、頭のてっぺん(天=てぃん)から、渦を巻くように編んでいきます。

アダンの葉を十分に湿らせて柔らかくしてから編みます。